石野瓦工業の強み
瓦職人の世界
瓦の誕生と現在
瓦というものを、いつ誰が考え出したのか。これは完全には解明されていません。
焼き物の瓦は中国で発明されました。そして朝鮮半島を経てわが国に伝えられましたが、さまざまな改良が加えられ、
今ではすっかり我が国の風土に溶け込み、元来中国から始まったとはあまり知られていないほどです。
瓦は丸瓦と平瓦を組み合わせて雨や雪に対するものでしたが、次第に種類が増えていきました。
そして現代では装飾として作られたものも増え、屋根の形によって葺き方も、また使われる瓦も異なります。
軒先を飾ることはもちろん、けらば※1にも文様を飾った瓦を使います。
大棟や降り棟は高く積み、飾り瓦を置いておりますし、その先端には鬼瓦を据えています。
大棟といえば、古い時代には鴟尾をその先端にのせていました。
時代が変わり、城が築かれるようになると鯱がのせられるようになります。
それから直接屋根の上ではありませんが、隅木の先や垂木の先を飾るために隅木蓋瓦や垂木先瓦などが用いられることもあります。
このように、屋根の部分によってさまざまな製品が作られました。
※1「けらば」とは 屋根の場所を示す名前で、切妻屋根や片流れ屋根の斜めになっている側の外壁より出ている部分のこと。
「造る」仕事と「葺く(ふく)」仕事
屋根瓦の設置・施工が完了するまでには、「造る」仕事と「葺く(ふく)」仕事があります。
現在の石野瓦工業は「葺き」専門にしていますが、現代表の石野欣秀が入社した当時は、瓦を「造る」ことから修業をしました。
長くこの業界で仕事をしていても、何よりも難しいと感じたのは、瓦を造るという仕事は、見よう見まねでやってもできないということでした。自然のものである「土」を原材料としているため、その時の湿度、温度、四季折々によって出来上がりが変わってくるのです。
長年の感覚で培うしかなく、マニュアルもありません。だからこそ、個々人が造る一つひとつの瓦の価値が高まり、命を吹き込むように丁寧な思いが強く逞しい瓦を生むのです。
一方で、瓦を葺くという仕事は瓦職人が魂を込めた作った瓦を、大きな建築物の重要な部分である屋根に丁寧に施工することで、これから先何百年も変わらぬ姿で人々の目に触れるお手伝いを行っています。
石野瓦工業では主に、飛鳥瓦、大和瓦、三州瓦、淡路瓦などを用い、全国各地の歴史的社寺建築を含むさまざまな建築物を葺きなおす業務を行っています。
各瓦によって特性がさまざまで、状況によって使用する瓦を使い分けることで、常に最高の品質となるよう心がけています。
瓦葺き職人としての喜び
職人として一番やりがいを感じるのは、やはり「ありがとう」をもらった時です。石野瓦工業では数多くの社寺建築の瓦葺を請け負っており、そのありがとうを目に見える形として多くの感謝状をいただいています。
ときには国宝級や文化遺産の屋根瓦をすべて葺き替えるという責任重大な仕事もあり、そこには緊張も責任もありますが、それだけに自分たちの技術に自信を持つことができます。
その惜しみない努力と技術を注いだ成果物に、ありがとう、すばらしいという目に見える評価として感謝状をいただけるのは、何にも代えられない喜びです。
また、ものづくりの仕事をするうえで一番の喜びは、「残る」仕事であるということだと思います。
こんこんと受け継がれる技術力とともに、自分の携わった作品が世に残っていく、未来のどこかで誰かの人生や価値観に何か1つでも喜びを与えることができるかもしれない。そう思うと、こんなに誇り高い仕事はありません。
社寺修復工事の工程
修理前の調査
実際に瓦および、木部などの現状を確認し、どの程度の修理になるか積算します。そのため外観はもちろん小屋組内部についても調査します。
仮設足場設置
これからの作業のため、軒周りに作業用の仮設足場を設置します。
素屋根設置
後で瓦屋根を撤去するため、素屋根を設置して工事中の雨風に備えます。
古瓦めくり
古瓦および葺き土を屋根から降ろします
野地板撤去
傷んだ野地板・垂木を撤去します。
木部調整
経年劣化して、縮みや歪みが生じた部材などを、取替え・補修します。
垂木取替え
新しい垂木に取替えます
防虫・防腐処理
改修後の木部を害虫などから守るため、薬剤で処理します。
野地板張替え
野地板張替え
下地材張り
野地の上に防水下地材をはります。
瓦揚げ
桟木を打ち、瓦を配置します。
瓦葺き
各部の屋根瓦を施工します。
完成
仮設足場などを撤去して完成です。軒樋なども新しく取り替えています。